7年前に「2026年完成予定」と書きました。その2026年が来ました。
7年前、このブログにサグラダ・ファミリアの記事を書きました。タイトルは「2026年完成予定サクラダファミリアのイエスの塔の作成。主任彫刻家は日本人!」。2019年5月のことです。
その2026年が、来ました。
あのとき、私はこう書いていました
1882年の着工から144年、ガウディの没後100年にあたる2026年に完成予定である、と。まだ未完成だった「イエスの塔」の主任彫刻家が日本人の外尾悦郎さんであること。そして最後を、こう締めくくっていました。
「イエスの塔」が完成すると世界で一番高い教会になります。
「完成すると」。まだ見ぬことを書く、あの独特の書き方です。
2026年6月10日
イエスの塔は、完成しました。
ガウディの命日であり、没後100年にあたる6月10日。高さ172.5メートル。18本ある塔のなかで最も高く、報道によれば世界で一番高い教会になったそうです。当日はローマ教皇が訪れ、記念のミサが行われたと伝えられています。
7年前に「完成すると」と書いたことが、そのとおりになりました。
正直に書きますと、私はまだ見に行けていません。ニュースで写真を見ただけです。何度もバルセロナには行っているのに、いちばん見たかったものを、まだこの目で見ていない。
それでも、全体は完成していません
塔は建ちました。けれど大聖堂そのものは、まだ終わっていません。全体の完成は2034年から2035年頃と見込まれています。
残っているのは、正面玄関にあたる「栄光のファサード」と、そこへ続く大階段です。
そして、この大階段が難しい。予定地は2つの街区にまたがっていて、およそ1,000の住宅や企業に移転してもらう必要があるといいます。そこに住む人たちの反対があり、まだ話がついていない。
石は積める。彫刻も彫れる。3D解析も工作機械もある。それでも、人と話がつかなければ前に進まない。
144年かけてここまで来た建物が、最後に残しているのは技術の問題ではありませんでした。
資料のない場所で、答えを見つける
7年前の記事を書きながら、いちばん心に残ったのは外尾さんの仕事の仕方でした。
ガウディは詳細な設計図を残していません。模型とイラストで構想を弟子に伝え、その資料も1936年に始まったスペイン内戦で失われました。手がかりは、わずかしかない。
そのなかで外尾さんは「ガウディだったらどうしたか」を考え、答えを見つけて彫っていきます。最初の作品である西側の「植物の芽」も図面がなく、東側にあるガウディ本人の彫刻からヒントを得て作ったそうです。生誕の門の15体の天使のうち2体は、東洋にも天使はいるという外尾さんの考えから、東洋人の顔をしています。
正解が書かれた紙は、どこにもない。それでも決めて、形にする。
これは、私の仕事と同じだと思いました
海外との取引にも、正解の書かれた紙はありません。
この国の、この業界で、この商品を、この相手と。その組み合わせに前例がないことのほうが多いのです。制度は調べれば分かります。関税も、必要な許認可も、書類の様式も、調べれば書いてある。
けれど「この相手が何を大事にしているか」「どこで話が止まるか」は、どこにも書いていません。
だから現地に行って、会って、確かめます。相手の考え方を推し量って、こちらの出し方を決める。外尾さんのされていることとは規模も重みもまるで違いますが、やっていることの形は、少し似ている気がしています。
そして、大階段の話が示しているとおり——最後に残るのは、たいてい人との話です。
時間のかかることに、付き合う
サグラダ・ファミリアは、当初300年かかると言われていました。資金は寄付だけ、設計図はない。それが観光収入で資金状況が改善し、3D解析や工作機械が使えるようになって、144年まで縮まりました。
それでも144年です。そして、あと10年近く残っています。
海外との取引も、思ったとおりの速さでは進みません。相手にも事情があり、制度にも順番があります。急かせば早くなるものと、待つしかないものがある。その見分けがついていないと、焦って良くない条件を飲むことになります。
7年前に「2026年完成予定」と書いた記事は、いまも同じ場所に残っています。当たった部分と、当たらなかった部分と、両方を残したまま。それでいいのだと思います。
次にバルセロナへ行くときは、あの塔を見上げてきます。7年越しで、ようやく。
2019年に書いた記事はこちらです。 → 2026年完成予定サクラダファミリアのイエスの塔の作成。主任彫刻家は日本人!
